ゼンジー中村師匠

当教室　創設者

＜中村師匠のこと＞

　古い話ですが、恒例の奇術発表会を控えて、みんなが練習に励んでいた頃、
私はまだ練習に入ってもいませんでした。
プロとして活躍しておられたゼンジー・中村師匠は、オフタイムには必ず私達の
教室にきて練習を見てくださいました。
そんなときのこと。

「君は今度は何をやるんだ？」「マギーロープです」「どれくらい練習をやった？」
「まだ全然していません」「そらあかん。ロープをもっといで！」ということで、直接
のご指導を頂きました。
そのころ、師匠は体の具合が悪く、教室に来られても横になって見ておられたの
ですが、わざわざ起き上がり、形を見せて教えてくださったのには恐縮いたしました。
奇術を愛し、奇術を中途半端に扱わないお心掛けであると思いました。

また、ゼンジー・中村師匠は、教室に来られたときに、４～５人の者にファンカードを
見せて下さいました。
私達の目にはすばらしい技術で、ファンに広がったカードが元に戻されてカードが
重なってゆく有様は、まことに見事なものでした。
しかし、師匠は次のように言われました。

「ワシは、ファンカードが不得意なんで、絶対に舞台には掛けんことにしている」　
「えっ！　そんなにうまいのに・・・・ですか？」　「いやアマチュアなら失敗しても
愛敬々々で済ませられるが、プロが失敗しては言い訳もできん。だから絶対に
大丈夫というもの以外は、舞台では演らん」

　これを伺って、さすがプロ根性、プロの心意気であると感服致しました。
この師匠のマジックに対する精神が受け継がれてゆくならば、関西奇術教室の
発展は間違いないものと確信しております
　　　　　　　　　　　　佐々木　保（故　ゼンジー佐々木）

ゼンジー中村